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回復は元の状態に戻ることではない。

備忘録です。

本職の仕事を変えたことに伴い、絶賛読書中なので、よろしければちょっとお付き合いください。

中井先生の言う「オリヅルラン方式」の適応についての考え方が好きです。

また、回復は「元の状態に戻ることではない」というのはとても重要だと思います。

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『「宇宙」を守ること』

患者さんの独自世界が成長していくこと。

「社会復帰」と称して、彼らをいきなり社会、つまり彼らの苦しみの原因となった場所へと放り込むことは乱暴きわまりないことなのではないか。

患者さんに社会復帰のトレーニングを課すことが「治療」だと思われているふしがある。

欠損した能力を補てんするのが治療ではない。

そんなふうに頑張りすぎてしまうことから「病気」が始まるのではないか。

訓練したらどうにかなるというのではなくて、ゆっくりと何かが溜まってきて、時期が来たらそれがはじけるような。

「オリヅルラン」ってイメージ。弾けて拡がっていって、その先でまた弾けて…。そんなふうに生活は豊かになっていくのでは。

治療者が意図して患者さんのスキルを引き上げようとするのではなくて、患者さんの生活が広がりながら豊かになっていくのを支えるということ。

人にはそれぞれの世界というか「宇宙」がある。

むしろ必要なことは、彼らの「宇宙」に共感する人々が現れて、それが押しつぶされないように守られることが必要。

統合失調症者の人の「社会復帰」というのは、患者さんたちを既存社会の鋳型に入れ込むことではなくて、患者さんの「宇宙」を包み込んで育てるようなことと言える。

「統合失調症はけっして治らない病気ではないけれど、治るために限りないたくさんの障壁のある病気である」

ひたすら社会復帰を目指す身も蓋もない支援では、風当たり強すぎて育つものも育たない。

社会的能力の向上ばかりを目標にする社会復帰観の批判。

寛解過程においても「元に戻る」ことを目標とする治療を根本的に否定。

何らかのきっかけで患者が発病前の状態に戻ったとしたら、それは発病のリスクを抱えた強い緊張状態に逆戻りしたということではないからである。

中井にとっての回復は、患者が元の状態に戻ることではなく、緊張が解け、安心感の中に寛ぎながら、自分の内なる自然が根を伸ばし、葉を茂らせていくことにほかならない。

私たちは一般的に、病気が回復していくプロセスを、発病とは反対のプロセスと思い描きやすい。

統合失調施用の回復のプロセスについても、症状がひとつずつ消えていくプロセスをイメージしてしまいやすい。

しかし中井は、前の状態に逆戻りしようとする治療者や患者の考え方に警告を発している。

以前の状態に戻ろうとすること、以前のような栄光を取り戻そうとすることは、すなわち「無理の時期」「焦りの時期」に舞い戻ろうとすることであり、ふたたび発症のプロセスを繰り返さざるをえないことになるからである。

『中井久夫との対話』村澤真保呂、村澤和多里 著

 

 

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